大判例

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東京地方裁判所 昭和44年(ワ)14027号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕前記認定事実によると、原告高森及び同矢口には、昭和四四年一〇月分の代金債務を期限に履行しなかつたこと、原告坂本、同遠藤には、契約上当然負担すべき運賃負担申入れを拒否し、また昭和四四年一〇月分の代金債務を期限に履行しなかつたこと、原告小松、同武井には契約上当然に負担すべき運賃負担申入れを拒否したこと等の各点に義務不履行があつたことが明らかである。

ところで、本件の如く、日々一定量の商品を多数の消費者に提供することを業とする者が、同商品を製造業者との間で継続的に購入する契約を締結した場合、売主が同商品の出荷を停止することは、買主にとつて致命的であり、日々の供給を期待している消費者に提供することが不能となり、数日を経ないで消費者は離反し、買主は顧客の大半を失う結果になることが明らかである。従つて、右買主に契約上義務不履行がある場合であつても、これに対応して同時履行の抗弁権行使として売主がその後の商品提供を拒絶することができるか否かは検討を要する。特に買主に軽度の債務不履行しかないのに、売主が同時履行の抗弁権を行使してその後の商品の出荷を停止することができると解するには疑問がある。結局将来商品の出荷停止をされても止むを得ないと一般に理解される程度に義務違反行為が買主にあつた場合に限り、売主は同違反の程度に相応する限度で将来の履行を拒絶することができるものといわねばならない。従つてかかる観点から判断するに、結局営利活動を行う売主にとつて最も重要なるものは代金の受領であると解されるから、少くとも買主が少額とはいえない額の代金の支払を怠つたときは、これに相当する量の商品出荷を拒絶することができるが、同商品引渡に関する運賃の不履行の如き一般に軽微かつ附随的な義務不履行の場合に、将来の商品出荷を差止めることは相当ではないと解すべきである。

すると、右一カ月分の代金債務の不履行のある原告高森、同矢口、同坂本、同遠藤について、被告が同債務の履行があるまで同時履行の抗弁権を行使し、昭和四四年一一月二九日以降毎日引渡すべき商品の出荷を拒絶したことは許され、債務不履行とはならないものである。しかし、原告小松、同武井について右同日より出荷を停止したことは行き過ぎであり、同人らに関する限り、被告の出荷停止は債務不履行となるというべきである。 (井上孝一)

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